大切な物は忘れないように

アジカンを聞くのが本当に久しぶりだ。聞かなくなったのはいつ頃だろうか?「或る街の群青」とか「転がる岩、君に朝が降る」とか、そのくらいまではよく聞いていた記憶があるのだが。不思議なもので、聞くようになった時の事はよく覚えているのに、聞かなくなった瞬間はまるで覚えていない。

そんなアジカンだが、別に嫌いになった訳でもないし、興味を失った訳でもない。ただ何かの弾みで、ストンと抜け落ちてしまっただけなのだろう。人は微かに覚えている事を思い出す事はできるが、すっかり忘れてしまった事については忘れた事にすら気が付く事ができないのである。私が大切にしている物が何かのタイミングで抜け落ちていない事を祈る。

「本当に忘れてしまった物は、本当は別に大切でも何でもなかったんだよ」という台詞は妙に胸に落ちるような気がするが、まるで忘れてしまっていた歌を何かの機会で聞いた瞬間、自分の胸の中にある暖かい何かが蘇ってくる事もあるのだから、大切な物は大切に覚えておこうと思う。過去を振り返る事も時には重要なのである。

そんな忘れていたアジアンカンフージェネレーション。略してアジカン。飛躍してアジの缶詰。

そんな彼らがベストアルバムを出すとの事で、新曲を発表していた。ベストアルバムの中に入っているとのこと。

BEST HIT AKG 2(2012-2018)(初回生産限定盤)(DVD付)

今回の新曲の名前は「生者のマーチ」とのこと。MVも公開されていたので、聴いた。


アジカンの雰囲気

聴いて感じたのは、私の脳内に存在していたアジカンとはかなり雰囲気が違う、という事に尽きる。

声に関してはアジカンである。声は年齢を重ねてもほとんど変わらない。アーティストのアーティストらしさを強調付けるのに一番役立つのはやはり声なのだろう。ただ、こういう曲を作るバンドになったんだなぁ、というのが聴いていて最初に思った感想だ。

リフに特徴的なメロディーを残す訳でもなく、歌詞に独創性をふんだんに盛り込んでいる訳でもなく。いや、こういう言い方をすると、あんまり良くなかったような伝わり方がしてしまうかもしれないが、そんな事はない。良かった。

しかしながら、やはりどうしても私の中に印象強く残っているアジカン像とはまるで違う楽曲だったのである。

なんと表現すればいいのだろうか?昔のアジカンは強烈なのである、刺激的なのである。そして今回聴いたアジカンは優しく寄り添う感じなのである。昔のアジカンがドナルド・トランプであるならば、今のアジカンはタモリなのである。これで伝わるのだろうか?正直言って自分でも意味わかんねぇから伝わらないと思うけれども、自己主張は薄くなったけれども存在は際立っているのだ。

PVの風景はどこも綺麗で、出てくる女性は悲しげで、奏でる歌と言葉はそれを励ますようで。とても素敵な楽曲でした。